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中国・反外国制裁法の整理

コンプライアンス

 安全保障貿易という単語がいつの間にか発展し、経済安全保障というタームがメディアを賑わせるようになった。日本の上場企業に対して、被制裁の中国企業が資本を入れるといった問題(?事実?)や、90歳を過ぎた社長が、これまでの商流の延長でドローンに転用されるリスクがあるモーターを輸出して急遽お咎めを受けるなど、コンプライアンスという分野は、与信管理者にとって悪夢のような頭痛の種だ。

 国内独自の法令順守対応では、ご存じ反社会的勢力との関わりを回避する「反社チェック」があり、この対応だけでも巨万の富が情報収集に投じられている。懸念されていたFAFTの対日審査の結果が公表され、念願の通常フォローアップ国の仲間入りができなかった日本は、金融機関を中心に更なるAML/KYCの対応を求められることなる。はて、情報産業の関連株価はうなぎ上りと行くだろうか。

中国・反外国制裁法とは何か?

 ただでさえ、NDAAだのOFACだの、はたまた不正競争防止法や贈収賄法に絡むところではUKBAだのチェックしなければならない対象が多すぎる中、中国版「取引しちゃだめよ」企業をリスト化したものが反外国制裁法だ。(ちょっと違うけど、ニュアンス的に)

 もう少し詳しく書くと、上に述べたリストは2020年9月に施行された「信頼懸念エンティティリスト規定」によって定められているのだが、2021年1月に施行された「外国の法律および措置の不当な域外適用の阻止に関する規定」とセットになり、派生的に今回の反外国制裁法が制定されていると理解される。

 エンティティリストでは、登録された個人や企業に対しての輸出入禁止や入国禁止等が掲げられ、域外適用の阻止では、中国にある現地法人が外国の法律に従って行動したら罰金(意訳)。反外国制裁法では、中国企業や個人に対して差別的制限措置を実行したら罰金。例えば、米国の取引しちゃだめよリストに従って、中国企業との取引を回避すると、罰金となる。

 要は、中国を取るのか?欧米を取るのか?と問うような、踏み絵に近い法律と言える。こんな法律を制定されてしまっては、取引に際してのリスクが非常に高いと言え、付き合わない方が無難というのが一般的な見解であろう。与信管理者の貴方はどうされるだろうか?

 そうした中国側の対抗措置が発動される可能性を織り込んで、契約書上で工夫できるポイントは複数あるようだ。例えば、損害賠償の上限規定や、取引解除条項の制定などが考えられるが、法律事務所側でもどこまで効果が発揮できるかは、判例がない分不透明なようで、解決策としてはやや心もとない。

情報提供屋の立ち位置

 さて、情報提供屋はどうするのだろう?これまでコンプライアンスされる対象は、西側諸国にあった。人権、安全保障、テロ、ならず者国家。既存の情報提供屋は、これらのセオリーや法律に適した形でデータベースを構築しており、日本企業も西側諸国の一員として、情報を活用しながらそれらの順守に資金を投じてきたに他ならない。そうした西側の情報提供屋は、中国のエンティティリストも「取引しちゃだめよ」リストに含めるのだろうか?

「アメリカの優良企業だけど、中国が取引しちゃダメっていってるから、高リスク。」とユーザーに示すことができるだろうか?難しい問題だ。この点、中村格付研究所で精査の上、報告したいと考えているので続報に乞うご期待。

 私見としては、既存の情報提供会社が中国のリストを制裁規制対象に含める事はないと思う。当面、日本企業の与信管理担当者としては、独自にチェックしておく必要がありそうだ。法律事務所の話では、7月に前米国商務長官を含む個人及び組織に対する制裁が初の適用事例となり、今後のリスト拡充の動向はまだ不透明だそうだ。まずは、百度を利用して「美国制裁」と検索したり、Google Alertに設定するだけでも、情報のアンテナは広く張れそうな気がする。

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1638949538002780671&wfr=spider&for=pc

 

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