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倒産後の信用調査について

倒産した会社を調査?

 先日、取引先の審査担当者とディスカッションしていると、「中村さん、倒産してしまった会社だと、信用調査掛けても意味ないよね?」と問われた。確かに彼が指摘する通り、倒産してしまっている状況であれば、裁判所や管財人が関与して、何らお金が動かせるような状況ではないし、新しく取引が始められる対象でもあり得ないし、信用調査を行うことに一見意味がなさそうに見える。ところが、倒産後調査だけをもっぱら依頼してくるような組織もあり、実は倒産した会社を調べるという事には、通常の与信管理とは別の目的が往々にしてある。

海外の場合

 少し話が脱線するが、海外企業の信用調査報告書には、必ずLegal Statusという項目があり、調査対象企業について、法的実体があるかどうか明記されている。日本ではあり得ない話であるが、現に倒産状態にある(in activeやdissolvedといった状況の会社)企業から、新規の商談があり、倒産状態であることを見抜けずに取引を行い、そのまま相手先がドロン。貴重な資金が回収できなくなったといいう事件も起こっている。裁判で訴えようにも、相手先はすでに法的実体がないのだ。

 故に、倒産後調査ではないけれども、生きていると思っている会社が、本当に生きてますよね?というのは、信用調査報告書で確認すべき情報である。その会社がもし法的実体がすでになかったことが確認できれば、信用調査に掛ける一万円程度のコストは十分ペイしたと言えよう。

 また、海外の国々では、独自の倒産に対する定義があり、これらの知識を得ておくことも肝要といえる。日本では、法的倒産以外にも二回目の手形不渡りに伴う銀行取引停止により、資金繰りが暗礁に乗り上げたとの解釈から、実質倒産と定義している信用調査会社が多い。こうした独自ルールが各国別にあるのだ。おすすめは、大手貿易保険会社の一角であるユ―ラーヘルメス社がまとめている白書。主要各国の倒産の定義が首尾よくカバーされており、手元に置いておけばすぐに確認する事ができる。

倒産後調査の目的

 話を戻すと、倒産後調査の目的は大きく以下にまとめられる。その前提として、倒産状態であることを証明し、(自分の責任で)回収できなくなった債権を不良債権として償却してしまいたいという意向がある。

 1.本当に倒産してるの?確認してよ。

 2.現地の状況は?債権者はだれ?誰が管財人?

 3.実は雲隠れした代表者はほかに会社もってるんじゃないの?

 むろん、信用調査では必ず商業登記の確認を行うため、相手企業が法的な倒産状態にあるのか、私的整理であっても清算されているのか否か、自分で登記を確認する手間を掛けずともチェックする事ができる。怖いのは、実質倒産状態であっても、登記上生きている会社であれば、債務者としての法的実体は存在している事になり、債権者である皆さんには、債権回収の努力義務が継続してしまうという事だ。

 しかし、皆さんが依頼する倒産後調査に基づき調査に動く担当者は、そのあたりを良く理解している。なので、法的実体が仮にあったとしても、もはやコンタクト不能で、にっちもさっちも行きませんというニュアンスで、調査報告書をまとめてくれるはずだ。

 厄介なのは、倒産した(させた?)会社の代表者が、別に法人の代表者を兼務していた場合。多くの債権者はそっちから回収できるんじゃないかと期待するのではないだろうか。私はこの辺りの実務を行った事がないので、間違っているかも知れないが、代表取締役としてその倒産した会社の株主に対する責任は負うものの、債権者に対する責任は問えないと思う。仮にその代表者が株主であったとしても、配分原資とすべきは、その会社に対する出資金の範囲であるはずで、代表を兼務する他の会社にまで支払を求める事は難しい。

 なお、そのあたりの実務は、尊敬して止まない牟田園先生がブログを書かれているので、是非参考にされたい。https://credit-practice.com/

 次回は、自分がやってきた倒産後調査の実務について、いくつか読み物としてケーススタディを書こうと思う

 

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