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仕入先は確認しなくてOK?

 ついこの間まで「あけましておめでとう!」を繰り返していたかと思えば、もう間もなく節分。1月はあっという間に過ぎ去ってしまったと思っていたら、お客様から腰を抜かすような事例を教えてもらった。

 株式を上場しているこの超大手企業は、与信管理の体制がきちんと構築されており、専任の担当者が日々、自社の金銭的なダメージや、風評被害に巻き込まれることが無い様、情報収集と分析に当たっている。

 そうした中、米国にある仕入先の担当者から振込先の口座を変更して欲しいという連絡が12月27日にあったそうだ。12月末日付で予定されている支払金額は、なんと7,000万円。大金である。その担当者からのメールには、会社のロゴが入った依頼書も添付されており、一見疑わしい点は無いように見える。

 ただ、与信管理のプロである彼女の勘はピンッと働き、なぜクリスマス休暇のこのタイミングなのか。また月末決済に対するノートとして、あまりに直近すぎないかという点から、疑いの目をもつことができた。

 さて、送られてきた口座変更の依頼書には、振込先として代行会社であるAAA Recovery社が指定されていた。この商号だけみると、回収代行が一般化している米国にある回収会社かのように見受けられるが、そう判断してしまうと致命傷。審査担当者は、信用調査会社などのソースを使い情報収集を実施。AAA Recoveryは実在する会社であるが、運送業を行う会社で、まったくの業種違いであることから決済を見送るという決断ができた。

 クリスマス休暇で連絡が取りにくいだろうと思いながらも、仕入先A社に確認してみると、なんと担当者のメールアドレスがハッキングされ、なりすましによる詐欺に使われてしまっていたことが分かったそうだ。彼女が救った会社が被る可能性があった被害額は、繰り返しになるが7,000万円である。

 やはり、口座変更という事象や、休暇前の繁忙期の動きに、怪しいというフラグが建てられたのは、さすがプロの審査マンと言えるし、さらに情報を収集したいと思った時にそういうルートが構築できていたのは、日頃の業務経験の賜物であろう。送金が回避できて、本当に良かったと思う。

 かたや、こんな話もあった。

 中堅の製造業であるXXXマニュファクチャリングは、スイスに仕入先を抱えており、彼らから供給される部材を基に高品質な製品を作り、売上を順調に伸ばしていた。そうした中、仕入先の方から供給量が増えたので前払にして欲しいという要望があったそうだ。通常、取引実績が積み重なる程信用が生まれ、最初は前金だったのが与信取引になるというのが多いが、取引量が増えて前金を迫ってくるのは明らかに収支ギャップに問題を抱える黒字倒産の典型例だ。

 そこでXXXマニュファクチャリングは、信用調査会社に調査を依頼。しかし、スイスは多くの企業に財務諸表のファイリング義務がない為、数値情報の掌握が困難である。そこで、何とかなりませんか?という相談を貰ったのだが、取れないものは取れない。特殊調査のルートを使い、その会社の従業員から情報を得るとうケースもあるが、数百万のコストが掛かり、滅多に使えない。

 しかし、そこで尊敬して止まない牟田園先生の言葉が脳裏をよぎる「営業は、先方から決算書が貰えるようになって初めて一人前だ。」。つまりは、お互いに取引判断という会社のCFやPLを守る工程がある中で、情報を公開することが双方にとってメリットになる。この説得が、販売先だけではなく、仕入先に対してできるかという問題だ。

 XXXマニュファクチャリングに聞いてみると、何か失礼なことのような気がして、先方に決算書の開示は要求していないと。うーむ、情報を公開してもらえる事こそが信用の裏付けであり、Win-Winの関係を築くはずなのに、その初歩すら踏み出せていない企業が、なんと多い事か。

 仕入先に対しても、いかに「うちが払う側だからいいんだ!」という概念を捨てて、丁寧に情報を広い、丁寧に信頼関係を構築すいる事が大事かを思い知らされた二つの事案であった。

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