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パチンコホール

パチンコは好きですか?

新人調査員に対して割り当てが多い業界の一つに、パチンコ業界がある。大学生の頃、バイト先の賄いが唯一の食事であったくらい貧乏学生だった私は、親からの仕送りで学生生活を謳歌する友人と一緒に一攫千金を狙いにいったことが何度かある。非情にも、そうした金持ち学生はジャンジャンバリバリで、私と同志のネパール人の友人はなけなしのお金を吸い取られたものだ。ただ帰り道には、勝った友達が焼肉をおごってくれた事を昨日のことのように思い出す。

調査開始

そんな程度の知識しかない私に、最初に割り当てられたパチンコホールは、葛西を中心に5~6店舗経営する会社。(日本語訳で「西部」としておく)

当時のパチンコホールは、今のように清潔感があって、若い女性の店員が微笑みかけてくれるようなお店はまだ少なかった。

煙草の煙で視界が霞むなか、チーマー風の金髪兄ちゃんがめんどくさそうに箱を運んでいるのが一般的なホールで、どんな怖い人がでてくるのかと、おっかなびっくり取材に向かったものだ。

西部は想定を裏切るような会社で、取材に応対してくれる方は経理部長。白ワイシャツにネイビーのネクタイ。オフィスの中の女性は制服を着ており、一般的な企業のオフィスを想像してもらえば、ほぼ西部のオフィスもそれと同じ雰囲気と思ってもらえばいい。

初めてのパチンコホールの取材では、困ったことにアイスブレークのネタがない。なので1時間ちょっと早めにいって、小遣い制サラリーマンには巨額の3,000円で遊んでみた。学生時代にやってみた台とは違い、ボタンがあったり光ったりとやたら派手な台のうち、エヴァンゲリオンに決めて座ったのを覚えている。ものの20分で3000円はパー。名刺交換の後にその話をしたけど、経理部長は苦笑するだけだった。そりゃそうだ。これから企業評価されるっていうのに、その担当者が「オタクのパチンコで負けた」っていう話から始めるんだから(笑)

西部は取材にも丁寧に対応してくれた会社で、決算書も出してくれていた。まずはびっくりするほど巨額な売上高。80億に迫るような規模である。80億だ。パチンコ好きの皆さんに言いたいが、大手ではないパチンコホールでも80億あるのだ。粗利益率は18%だったのははっきりと覚えており、この背景は後で書こうと思う。

経験値アップ

それから少しすると、5号機問題やリースのオンバラ、償却期間の短縮など、パチンコホールにとっては本当に厳しい経営環境となるのだが、当時は地元商店街のスポンサーとしてパチンコホールが一番金を出したりして、パチンコホールが倒産するという流れは、想定し難いような時代だった。

西部の経理部長からパチンコホールの仕組みを色々と教わり、新橋にあるサウナ付きの大型ホール。堀切菖蒲園のラーメン屋の隣。上野の海賊やオリエンタルなやつ。30社程度は調査したと思うが、西部の部長から得た知識がなければ、まともな分析はできなかったと思う。

お前回胴遊商も知らねぇのか!

パチンコホールの調査経験をだいぶ積み、育ち始めていた「P店楽勝」というおごりの芽をばっさり摘み取ったのは、東上野と浅草橋の企業群だった。詳しい方には当たりまえかも知れないが、当時の私には想像が及ばない程、パチンコ産業はすそ野が広いのだ。

まず光ったり、鳴ったり、キュィンとしたりするパチンコ台は、東上野界隈の遊戯機メーカーによって作られている。メーカーがホールに対して直接パチンコ台を販売する事は少なく、専門商社よろしくパチンコ台販売業者が東上野に集積している。さらにパチンコ台の設置工事業者、パチンコ台専用の鍵製造業、玉の運搬機、たばこの吸い殻運搬機に空気清浄装置、さらにさらに最川下としてパチンコ台や設備の中古品を専門に扱う卸売業まで存在する。

浅草橋には、出玉と交換できる特殊景品を卸している会社や(一体どこで作ってんのかな?)、特殊じゃない景品(パチものと言われるやつ)を卸している会社などが集積している。パチもの卸の会社は面白い。オフィスの中に所せましと在庫があり、安っぽい時計やCD、ラジコンなど、いわゆるパクリ屋の倉庫かと思うくらい、色々な製品が積みあがっていた。

小見出しのフレーズは、パチンコホール専門工事業の社長に言われた言葉。仙台出身とのことで、東北話に盛り上がったのだが、回胴遊商って言われた時に聞き返したのがまずかった。怒鳴られて、半泣きで事務所を後にしたものだ。(その後会社年鑑売りつけたけど)

そうしたすそ野の広い業界の中で、中古遊技機卸業の会社が、私が生まれて初めて接した企業倒産。これについては次回書こうと思う。

余談

一応興味がある方向けに書くが、経営者はやっぱり「南北」が多い。浅草六区に当時新しくオープンしたパチンコホールの調査をしたことがあった。名刺交換した社長は仮に佐藤さんとするが、商業登記上の取締役はみんな読めない漢字。「あの登記のこの代表取締役の方は・・・。」「あ、それ僕です。」と佐藤さん。

設立間もないパチンコホールながら、資本金はなんと3億。

「3億の出どころはあまり気にせず、気が付いたらあったと思ってください。」

あの金は、どっからでた金なんだろうなぁ。

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